生まれついてのサプライズ好きで、子供の頃から変わり者で通ってきた。

あー誰か驚かしたい・・
そんな思いを胸にしまって、ぶらりと居酒屋の暖簾をくぐった。

酒は飲まない。メシを食いに来た。
ママさんが一人で切り盛りする店は、何を食べても美味い。

カウンタには常連の女性達。
ママさんと話が弾んでいる。

「一人で食事するのは寂しいから、お酒を飲むのよ。そうすれば、すぐ隣りの人と友達になれるじゃない」

「あたしは無理だな・・。だいたい、一人だとお酒飲まないし」

「うっそ!ママさん、それホント?信じられない」

「飲みたいとも思わないわね」

ミョウガをお揚げでくるんでカリッと焼いたのを、いつも注文する。
ママさんは島根の人らしい。
そっちの料理だろうか?美味過ぎる。

「ここを開店するとき、風疹で倒れちゃって。開店日と次の日、お休みにしちゃった。
「来てくれたお客さんが『ここは開店する前から閉店しちゃったの?』だって(笑)。
「それから23年、一回もお店は休んでないのよ。その2日間だけ。
「実はきょう、開店した日だったりするんだけど」

「へー!きょう開店日なんだ!おめでとうございます」

小さく拍手が起きる。
ぼくもつられて拍手した。
ママさんは照れくさそうに会釈して微笑んだ。

「あれから23年・・。この子なんか、まだ生まれてなかったものねえ」

お運びバイトの女の子がきょとんとしている。
いつも大学生を一人、バイトで使っている。

「ここまで続けて来れて、ほんとうにありがたいことだわ・・」

カウンタの女性たちは、しんみりとママさんの話に聞き入っている。
いや、店中のお客が耳を傾けていたに違いない。

・・・にやり。

いいことを聞いたぜ。
チャンス到来。
やるしかない。
きょうは凝った織りの黒いジャケットを着ている。丁度いい。
髪も昨日かっこよくカットしてもらったばかりだ。

さっさと食ってさっさと店を出る。

「ぜんぶ美味しかったです、どうもごちそうさまでした」

ママさんは、またニッコリした。

店を出て駅へ向かう。
電車には乗らない。
駅には、まだ営業している花屋がある。

奥さんも同意してくれた。薔薇以外なら許す、と。

二本だけ買い、軽くリボンなどしてもらった。

店へ戻る。

「あれ、忘れ物?」

ぼくの顔を見て、ママさんは少し心配そうに訊いて来た。

「違います」

「どうしたの?」

店内のお喋りが途切れる。
カウンタの女性たちも皆こちらを見た。

「おめでとうございます」

花を渡す。

キャア!!!

店中に歓声が起こった。

ママさんは真っ赤になった。

真っ赤で笑った。

いくつになっても女性はカワイイのだ。

ニヤリ。

してやったり。

オレって最高。

あー気持ちいいぜ。

最高の自己満足。